プレーリードッグについて

 

プレーリードッグ プレーリードッグはげっ歯目、リス科、プレーリードッグ属に属する地上で生活をするリスの仲間で、北米大陸に生息しています。
プレーリードッグ属にはオグロプレーリードッグ、オジロプレーリードッグ、メキシコプレーリードッグ、ガニソンプレーリードッグ、ユタプレーリードッグの5種類がいます。

日本ではこの中でオグロプレーリードッグが一般的に飼育されています。以前は毎年2万頭以上(推定)のプレーリードッグが愛玩動物として日本に輸入されていました。
しかし2003年に原産国のアメリカで野兎病やペストを媒介することが指摘され問題になりました。

日本では、これらの動物感染症の侵入を防ぐ目的で輸入禁止になりました。
このため現在では、国内繁殖個体がまれにみられる以外はほとんどのプレーリードッグが高齢になっています。

飼育と注意点

飼育と注意点 プレーリードッグは運動量が多く活動的な動物であるため、自由に動き回れる広さのケージを用意する必要があります。
プレーリードッグは地上性の動物ですが、高いところに登ることもあり、落下事故が起こることもあります。このため高さがありすぎるケージでの飼育には注意が必要です。

プレーリードッグは切歯(前歯)が一生伸び続けます。また物を齧る習性があり、金網式のケージを齧り続けることで切歯が折れたり、歯根に影響を与え歯牙腫などの問題を引き起こす可能性があります。
このためケージに内貼りをする、メッシュの目が細かいケージを用意するなどの工夫が必要です。

草食動物であるプレーリードッグは、野生下では主に繊維質が豊富でカロリーの低いイネ科の植物を食べています。このようにプレーリードッグは低カロリーの食餌でも十分対応できるように適応してきた動物です。飼育下では運動が制限されるためカロリーの消費が減り肥満になりやすい傾向にあります。肥満は健康に様々な悪影響を及ぼします。
飼育下での食餌は低カロリーで、高繊維のペレットと牧草を主食として与え、おやつ程度に生野菜などあげるのが理想的です。

成長期や病気のときなどは栄養価の高い食餌を与えるなど、状況によって変えることも必要です。

野生下で集団生活をするプレーリードッグは社会性が高く、人間とコミュニケーションを積極的にはかろうとする子も多くいます。しかし犬や猫などのようにしつけることは非常に困難です。
プレーリードッグは野生動物であり、いやなことは絶対にやりません。また発情期を迎えるとオスは凶暴になることもあります。
プレーリードッグの習性を理解し、お互いが住みやすい関係を築いていくことが大切です。

歯牙腫(オドントーマ)

歯牙腫(オドントーマ)とは?

プレーリードッグの切歯は歯根部で新しい歯を作ることで、生涯にわたって伸び続けます。伸び続けてきた歯は正常であれば、上下の切歯が適切に磨り減り正常な咬み合わせを維持しています。
しかし、切歯が折れる、歯根に過度の刺激が加わるなどの原因により切歯が歯肉から正常に出てこられなくなることがあります。
正常に出てこられなくなった切歯でも歯根部での成長は持続し、歯根部に硬いこぶのようなものを形成します。このこぶが鼻からの空気の通り道である気道を塞ぎ、鼻炎や呼吸困難などの症状がみられるようになります。
これがプレーリードッグの歯牙腫(オドントーマ)と呼ばれる病気です。
正確にはヒト、犬猫などの歯牙腫とは病態が異なるため仮性歯牙腫と呼ばれています。

図1
図1 レントゲン写真でみる正常な歯根部(左)と歯根部にできたこぶ(右、矢印)

症状

歯牙腫の初期症状は鼻水やくしゃみなどの鼻炎症状です。
進行するにつれてヒュウヒュウと呼吸音が聞こえる、食欲不振、体重減少などがみられるようになります。
プレーリードッグは呼吸のほとんどを鼻で行っています。このため歯牙腫が鼻腔を塞ぐことにより開口呼吸や呼吸困難などの呼吸器症状がみられるようになってきます。
また口で呼吸をすることで空気を飲み込みお腹の中にガスが貯まってきます。

診断

図2
図2 レントゲン写真で見る歯根部のこぶ

歯牙腫はレントゲン検査やCT検査で切歯の不正や折損の確認、歯根部のこぶの確認により診断します。
また腹部のレントゲン検査では開口呼吸により消化管内に貯まっているガスを確認でき、胸部レントゲン検査では肺炎などの呼吸器系の病気を除外することができます。

(図3,4)
図3 歯根部(矢頭)が鼻腔
(矢印)を狭めているCT像
図4 開口呼吸により消化管内に
貯まっているガス

治療

■内科的治療法

抗生剤や抗炎症剤の投与、ネブライジングなどを行います。しかし内科的治療は鼻炎の治療や全身状態、食欲、呼吸状態などの改善を目的にしています。
このため内科的治療法は歯牙腫を根本から治療するものではありません。

■外科的治療法

外科的治療法には問題となっている切歯を抜く方法と、鼻の上部に穴を開け別の気道を確保する方法があります。
切歯を抜く方法は、歯根部まで完全に摘出できれば完治が期待できます。しかし、切歯が途中で折れていたり、歯根部のこぶが大きい場合には切歯の摘出が非常に困難になります。また、切歯を抜いている途中に折れてしまい歯根部を完全に摘出できないこともあります。

鼻の上部に穴を開け別の気道を確保する方法は鼻の骨にドリルで穴を開け、こぶの位置よりも奥の鼻腔に繋げ気道を確保します。しかし、鼻腔が狭まってしまっている場合には十分な気道の確保がむずかしいこともあります。
また、一度あけた穴は自然に閉じてくるために術後は穴の管理も必要になります。

図5
図5 抜歯された切歯(左から軽度、中度、重度)

 

図6
図6 鼻の上からチューブを通し気道を確保する方法

予防

歯牙腫は飼育下のプレーリードッグに多く見られる病気です。
歯牙腫は切歯が折れてしまったり歯根に過度の刺激が加わることで発症すると言われています。
このことから高いところからの落下に注意する、ケージの金網をかじれないように内張りするなど、飼育環境を工夫することにより発症を未然に防ぐようにすることがなにより大切です。

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