イングリッシュ(左)やクレステッド(右)
など多数の品種があります。
モルモットはげっ歯目、テンジクネズミ科、テンジクネズミ属に属する動物です。
テンジクネズミ属にはオオテンジクネズミ、ギアナテンジクネズミなど多数の種があり、現在飼育されているモルモットの祖先はペルーテンジクネズミ、パンパステンジクネズミではないかと言われています。
モルモットは少なくとも3000年前から、南米で食用として家畜化されていたことが知られています。
長年にわたって家畜化されていたため、モルモットはたいへん人に慣れやすい動物です。
しかし一般的に気が小さく臆病な動物なので、あまり物音などがしない静かな場所で飼育するのが良いと考えられます。環境に慣れるまではむやみに触れられることもストレスとなるので気をつけましょう。
モルモットの食事
ペレット状の総合栄養食の他に、
写真のような乾燥牧草や生野菜
(おやつ程度)を与えてください。
モルモットは完全な草食動物です。
野生のモルモットは茎や根、樹皮、木の実などから栄養や繊維をとっていました。
飼育下のモルモットは専用のフード(ペレット)を中心に牧草、ビタミンCを多く含む野菜、果物などをバランスよく与えます。
モルモットは私たち人間と同じようにビタミンCを体内で作り出すことができないため、必ず食べ物から摂取する必要があります。
モルモット専用フード(ペレット状)にはビタミンCが含まれていることがほとんどですが、ビタミンCは熱や空気、湿気、金属などに触れるとどんどん破壊されてしまいます。
フードは開封したら涼しい場所で保管してなるべく早めに使い切るようにしてください。
ビタミンCが不足すると毛づやが悪くなってきたり、脱毛がみられたり、食欲がなくなってきて体重が減ってしまったり、歯や歯肉の病気にかかりやすくなったりと様々な体調不良がみられることがあります。
ペレット状のフードの他に牧草を与えると良いでしょう。
生野菜やその他の市販のおやつは、それだけでおなかがいっぱいにならない程度の量であれば与えることは構いません。
モルモットの飼育
モルモットは排泄物の量が特に多い動物です。
このため、頻繁にケージの掃除を行うなど衛生面には気をつけなければなりません。
不衛生なままにしておくとダニやノミなどの寄生やカビなどの皮膚病にかかり、様々なトラブルの原因になります。
飼育下のモルモットはある程度は人の生活に順応しますが、もともと夜行性の動物なので昼間はボーっとしている個体が多いことも知られています。
野生動物のような激しい運動量は要求しませんが、健康な体を維持するために、適度な運動も必要とします。ケージはある程度モルモットが走り回れる程度の広さを確保してください。
もともと岩の割れ目や巣穴で生活している臆病な性質のモルモットが安心できるような巣箱も用意すると良いでしょう。
モルモットの歯科疾患(不正咬合)
上下の臼歯が伸び過ぎてしまい、
舌や頬に刺さり、よだれの分泌や
食欲低下を招きます。
モルモットの歯は、切歯(前歯)が上下合わせて4本、臼歯(奥歯)が16本あります。
私たち人間と違って、モルモットは切歯も臼歯も生涯伸び続けます。通常は切歯も臼歯も上下の歯がうまく噛み合わさることですり減り、適切な長さに保たれます。
最も多い歯の病気は「不正咬合」といって、歯の噛み合わせがうまくいかないことにより歯が伸びすぎてしまうというものです。伸びすぎた歯が舌や頬にささり、痛くて食欲が減り、よだれが出たりします。
臼歯が伸びすぎている場合などは、自宅では気づきにくいと思われますので早めに病院での診察を受けてください。一度「不正咬合」になり、歯を削る治療を行って食欲が戻っても、歯は生涯伸び続けるのでまた同じように症状が再発し、定期的に治療を必要とするモルモットがほとんどです。
また、簡単に砕けてしまうペレットではなく、上下の歯ですり潰して食べる牧草を若い頃から食べさせることで「不正咬合」を予防していくことが大事です。
モルモットの消化器疾患(胃腸のうっ滞)
何らかの原因で消化器の動きが悪くなることを「胃腸のうっ滞」と言います。
ウサギなどと同じく完全な草食動物であるモルモットによくみられる病気です。
繊維の少ない食べ物やストレス、歯の「不正咬合」などが原因でおなかがうっ滞を起こしやすくなります。そうなるとモルモットは元気をなくし、食欲が減って、さらに消化管の動きが悪くなるという悪循環に陥ってしまいます。このような場合は、病院で消化管の動きを促進するような薬や、点滴をしてもらう必要があります。
モルモットは野生下では被捕食者であったので、具合が悪いことを隠します。全く食欲がなくなるなど重い症状の時には、病気が進行しているこが多いので、早めに対応してあげることが大切です。
モルモットの皮膚疾患(感染症)
ある種のダニによる感染症で被毛が抜け、
皮膚がガサガサになったモルモットです。
日本が高温多湿であること、前述したようにモルモットの排泄物の量が多いことなどの理由からケージ内が不衛生になりがちであるため、皮膚の病気にかかりやすいと考えられます。
モルモットの皮膚病で最も多いのが、シラミやダニなどによる感染です。
後ろ足を使って全身を痒がったり、フケがたくさん出て被毛のない部分が見えたりするようなら、早めに動物病院を受診してください。
多くは駆虫剤で治療することができますが、それと同時にケージ内の掃除を徹底する必要があります。薬でせっかく駆虫できても、ケージ内に虫の卵が落ちていては、再感染する危険性が高いからです。
その他には、真菌・細菌の感染や、腫瘍などの様々な皮膚病があります。
モルモットの生殖器疾患(難産)
1才を越えて初めての出産を迎え、
難産になったモルモットの
レントゲン写真です。
おなかに4匹の子供がいますが、
骨盤の幅が十分でないため、
帝王切開術を行いました
モルモットは1回の出産で2~4匹の子供を産みます。モルモットの妊娠期間(70日前後)は他のげっ歯類と比べて著しく長いため、モルモットの子供は生まれた時から眼が開き、毛や歯も生えています。
長い妊娠期間のためか、モルモットは妊娠中や出産時にしばしばトラブルが発生することがあります。
分娩の途中で出産が著しく遅れてしまい、人工的な助産をしなければ正常に分娩することができない状態が「難産」です。
「難産」の原因の一つに、1歳以上の雌の初産が挙げられます。モルモットの雌は骨盤の一部が軟骨でできていて、出産時にホルモンが作用し、この部分が開くことによって胎仔が通過するのに必要な産道の幅が確保されます。
雌が6~9ヵ月齢以上の年齢であると、この骨盤が十分に開かず、難産の原因となることがあります。
この場合は、緊急の手術が必要な場合もあるのでできるだけ早く病院に連れていってください。
雌の年齢を考え、計画的に繁殖を行うことが防ぐための手段の一つとして考えられます。
モルモットは性成熟の早い動物なので、雌なら2~3ヵ月齢くらいが繁殖適齢期です。
雌の健康状態や雄との相性にも気を配って、無理のない繁殖を行ってください。