飼い鳥の食事の考え方

飼い鳥と一口にいっても、多数の種が飼育され、原産地も広範囲に及び食性もそれぞれ異なっています。また、野生下と全く同じ食事が適切な食事とは限りません。飼育下では野生と環境が異なることで運動量や発情などの生理も変化していることが多く必要な栄養の質や量が変わってくることも多いと思われます。
このため野生下での食性はどういった食物を中心に与え、何が必要でないのかを判断する時の参考にすると良いでしょう。

飼い鳥の食性は大きく穀食性、果食性、蜜食性、雑食性の4つに分けられます。ただ、この4つのカテゴリーに完全に分類されるのではなく、カテゴリーをまたいだ採食がみられる鳥もいます。また、食事の構成を考える際にそれぞれどの栄養素がどの程度必要なのかという目安になるものが栄養要求量です。
鳥類の中で家禽(ニワトリ、ウズラ、アヒル)は古くから栄養要求量が研究され基準がまとめられていますが、飼い鳥の栄養要求量は現在も研究中の段階で正確にはわかっていません。飼い鳥については家禽のデータを参考に大まかな推奨量がまとめられています。
これらを元にペレット(栄養バランスのとれた総合栄養食)がいくつものメーカーで製造されています。

ここでは愛玩鳥として最も多く飼われているインコ類、オウム類を中心にまとめます。
現在、飼育されている鳥は主に種子食を与えられていることが多く、それだけでは様々な栄養素が不足するため、補助飼料を与えることが必要です。
他の動物種にも共通することですが、それぞれの栄養素は過不足があると様々な病気の原因となります。飼い鳥は栄養失調による病気でしばしば来院します。飼い鳥の栄養性疾患の代表的なものをいくつか以下に記します。

  • エネルギー(脂質・炭水化物)過多:肥満。
  • ビタミンA不足:感染症にかかりやすくなる、腎臓病。
  • ビタミンD不足:幼鳥;くる病、脊椎・胸骨の湾曲、嘴の軟化など。
            成鳥;骨軟化症、産卵率の低下、卵殻の欠如または薄くなるなど。
  • ビタミンB群:脚の虚弱・湾曲、口内炎、成長遅延など。
  • カルシウム不足:雛鳥では、成長遅延、くる病など。
            成鳥では過産卵の雌で骨軟化症、卵殻形成異常など。
  • マグネシウム不足:発育遅延、骨軟化症、卵殻形成不全。
  • ヨード不足:甲状腺の機能低下(呼吸困難、肥満、換羽不全など)。

主食

■穀類・種子類(アワ、キビ、ヒエ、カナリーシード、エンバク、トウモロコシなど)

市販の配合飼料には上記の4、5種類が混合で配合されたものが多く、皮付き餌とむき餌があります。

皮付き餌

皮付き餌

むき餌

むき餌

アワの穂、アワ玉、エンバク、カナリーシード、とうもろこし

アワの穂、アワ玉、エンバク、
カナリーシード、とうもろこし

エンバクはタンパク質に富んでいますが、アワ、キビ、ヒエ、カナリーシードだけの配合飼料などではタンパク質が不足してしまうこともあります。
また、カナリーシード、エンバク、トウモロコシは過剰に脂質が含まれるため、与えすぎには注意が必要です。

また、通常の配合飼料はそれだけではビタミン類やミネラルは推奨量を満たしていません。

穀類・種子類を主食にする場合、以下の3点に注意してください。

  • まずはタンパク質や脂肪の配合量が適切かどうか確認してください。
  • また適切に配合されていても上記のように脂質に富むものなどを鳥が好んで食べてしまい、偏食になることがあるので、与え方としては毎日適量を餌入れに入れて、ほとんどなくなったら新しくすると良いと考えられます。また皮付き餌はむき餌よりも栄養価が高く、毎日餌箱の殻を吹くことで食べた量も確認することができます。
  • また不足分のビタミンやミネラルの補給のためにサプリメントを用いることが推奨されます。

■総合栄養食

総合栄養食は上記の穀類や種子類のみに比べ、栄養バランスがとれていると考えられますが、鳥用の総合栄養食は犬や猫のように基準化されていないため、各メーカーが独自の研究に基づいて作成しています。
商品によって形状や固さ、味、色、フレーバーなどが異なるため、実際に使ってみてその鳥が好んで食べるか、食べても便がゆるくならないかなど様子をみながら適切なフードを選ぶ方法が良いでしょう。
主な総合栄養食を記載しました。

総合栄養食

ハリソンスーパーファイン

ハリソンスーパーファイン

ハリソンマッシュ

ハリソンマッシュ

ズプリームフルーツブレンド

ズプリームフルーツブレンド

ハリソンスーパーファイン拡大

ハリソンスーパーファイン拡大

ハリソンマッシュ拡大

ハリソンマッシュ拡大

ズプリームフルーツブレンド拡大

ズプリームフルーツブレンド拡大

副食

■種実類(ヒマワリの種、麻の実、サフラワー、ナタネ、エゴマ、ピーナッツなど)

麻の実、ひまわりの種、ナタネ

麻の実、ひまわりの種、ナタネ

タンパク質の含有量が高いため、タンパク質の良い供給源となりますが、同時に脂肪も多く含まれているため、過剰摂取による肥満が問題となることもあります。
また栄養価が高いため、保存状態によっては真菌(カビ)が発生しやすいこともあるので注意が必要です。

■野菜類

野菜類にはβカロチンが含まれ、体内で必要に応じてビタミンAに変換されます。
小松菜やチンゲン菜などの緑黄色野菜の方がキャベツやレタスのような淡色野菜に比べ、βカロチンが多く含まれます。しかし緑黄色野菜にはカルシウムの吸収を悪くするシュウ酸も含まれるため、過剰な摂取には注意が必要です。

■果実類

果食鳥には必要な餌ですが、穀物食の鳥には少量であれば与えても構いませんが、多量に与えると下痢をしてしまうことがあります。
また、アボカドは中毒を起こす可能性があるため、与えてはいけません。

■鉱物飼料(ボレー粉、カットルボーン、塩土、ミネラルブロック)

ミネラル(主にカルシウム)の摂取を目的に与える飼料です。
カキの貝殻より作られたボレー粉は汚れや菌が繁殖していることが多く、保存状態によってはカビが繁殖する場合もあるため、流水による洗浄後、熱湯消毒を行い乾燥させてから使用することが望ましいと言われています。
カットルボーンはイカの体構造の一部です。
塩土は塩と赤土、ボレー粉を水で混ぜ合わせたもので塩分とカルシウムの補給に有用です。
ミネラルブロックは各種ミネラルを配合してブロック状にしたミネラル剤です。
どの種類の鉱物飼料でも鳥が好んで過剰摂取してしまうと多量のグリット(筋胃内に停留する砂)による消化管の閉塞などを招く恐れがあるため注意しなければなりません。

■アワ玉

アワに卵をまぶしたものですが、市販のものは卵が少なく、ほとんどむきアワと変わらない栄養価と考えられます。

■色揚げ剤

赤カナリアの羽毛の赤色を濃くするための飼料で、パン粉に植物油とカロチンを混ぜて作られたものです。観賞目的の飼育でなければ、油分の過剰摂取になる可能性もあるため、控えていただくことが望ましいです。

小鳥の食餌制限方法

★飼育下の小鳥では餌の食べ過ぎによる肥満過発情産卵過多等が問題になることがあります。
これらの問題を解決する為に食餌量を制限する方法(食事制限)があります。
以下に具体的な実施方法を紹介しますが、不適切な食餌制限は命に関わるリスクを伴います
食餌制限を行う際には獣医師と相談のうえ、体重や体調を確認し適切に実施して下さい。
食事制限は生涯続けなければなりません。

【実施方法】

  1. 体重や健康状態のチェック
    腫瘤や腹水等の病気で体重が増加している可能性もあります
    本当に食餌制限が必要かの確認の為、病院での健康診断をお勧めします
  2. 小数点(0.1g)まで計測できるスケールを準備
  3. 体重は毎朝測定 朝ご飯をあげる前に測定すると良いでしょう
  4. 採食量の計量

① スケールに食器を乗せ0に合わせる

スケールに食器を乗せ0に合わせる

② いつもあげている量のご飯を入れ計測

いつもあげている量のご飯を入れ計測

③ 翌朝食器を取り出し、スケールに食器を乗せ0に合わせる

翌朝食器を取り出し、スケールに食器を乗せ0に合わせる

④ 入っていたご飯を捨てて再び食器をスケールに乗せ計測

入っていたご飯を捨てて再び食器をスケールに乗せ計測

⑤ ②-④がその日の採食量になる

⑥ ①~⑤を一週間続け採食量の平均を出す

①~⑤を一週間続け採食量の平均を出す

 
         
  1. 平均採食量から0.2g減らし、朝・夕に分割して与える
    • 食餌制限をすると一気に食べ切ってしまい過剰に水を飲む事もあるので、分割して与えて下さい
    • 一度減らしたら5~7日は同じ量を与えて下さい
    • 体重が急激に落ちる(1週間で元の体重の1割等)、胸筋だけが落ちる、膨らんでいる、緑色の濃い便が出る等異常があれば食餌制限を中止し、かかりつけの病院に相談して下さい
    • 体重の1割を2週間~1カ月かけて落としていきましょう
  2. 体重に著しい変化が無い場合は、5~7日毎0.2gずつ減らす
  3. 目標体重になっても体重測定と食餌量のコントロールを続ける
    • 季節や換羽等により必要な食餌量は変動するので鳥の様子を観察して生涯続けて下さい

※ご質問等ございましたら当院スタッフまで御声掛け下さい。

発情抑制方法

★鳥(特にセキセイインコやオカメインコ等砂漠種)は野生では寒暖差がある・餌が少ない等過酷な環境で暮らし、雨期など条件が揃った時に一斉に発情します。一方飼育下では暖かく、いつでもご飯を満足に食べる事が出来、愛情を注いでくれる飼い主様がいる等、発情しやすい環境となっています。

★その為飼育下の鳥では過発情による産卵過多や卵塞、卵管脱、卵管蓄卵材症、嚢胞性卵巣等の雌性生殖器疾患や雄では過剰な発情行動による擦過傷や精巣腫瘍等が問題になることがあります。
これらの問題を予防する為に過剰な発情を抑制する事が大切になります。以下に具体的な発情抑制方法を紹介します。

【発情抑制方法】

  1. 日照時間の調節
    ほとんどの鳥が明るい時間が長くなると発情する長日繁殖動物なので、明るい時間を10時間以内、場合によっては6~8時間以内にして下さい。鳥が起きていてもかまいませんが、連続した暗期が必要なので途中で明るくしないで下さい。
    文鳥は短日繁殖動物なので明るい時間が10時間以上で発情が抑制されると言われています。但し、明るい時間が長くなると、ご飯を食べる時間も長くなり体重過多となって発情が起こる可能性もあります。
  2. 巣や巣材の撤去
    巣や巣材(床に敷いた紙、布等)があると発情が促されるため、潜り込める物を全て取り除きます。放鳥中に狭い場所に潜り込む、紙を齧る等発情を促す行動をする場合は放鳥を控えましょう。また、放鳥時間が長い場合はケージ全体を巣と思う場合があるので、放鳥はしっかり見ている事が出来る時間だけ実施しましょう。
  3. 温度と湿度を下げる
    小型鳥の多くは雨期(暖かい、湿度が高い)に繁殖します。その為温度と湿度を下げる事は発情抑制につながります。しかし、温度と湿度を下げ過ぎると体調を崩す原因にもなるので、無理せずよく観察しながら実施して下さい。文鳥は雨期に巣が濡れてしまい繁殖出来なくなるので、湿度を上げると発情が抑制される傾向があります。
  4. 青菜を制限する
    雨期に採食量の増える青菜も発情を促すと言われています。青菜を制限し、必要に応じてビタミン剤で不足を補いましょう。
  5. 発情対象となる鳥、人、物を避ける
    対象となる鳥は隔離する、対象となる人は接触を避ける、発情を促す背中を触らないようにする(おもちゃ等も背中に触れないようにする)、対象となる物は取り除きましょう。
  6. 体重を管理する
    発情しなくなる体重になるまで、徐々に食餌量を減らします。効果的ですが、きちんと体重や体調を確認して実施しないと生命に係わる可能性があります。詳しくは「小鳥の食餌制限方法」をご覧下さい。
  7. 薬剤による発情抑制
    内服や定期的な注射等の方法がありますが副作用が出る可能性がありますので、診察のうえ実施するかを検討しましょう。
    上記の方法がありますが、1つの方法では効果が出ず、複数の方法を実施していく必要が出てくる可能性があります。上記の中で最も効果的なのは体重管理ですが、リスクも伴います。獣医師の指導の下注意して実施して下さい
    また、既に疾患が進行している場合は発情抑制方法を実施しても予防にならない可能性もあるので、異常がみられる場合は一度獣医師と相談のうえ、体重や体調を確認し適切に実施して下さい。