ハリネズミは、食虫目ハリネズミ科ハリネズミ亜科に属する動物です。食虫目は原始的な動物でハリネズミのほかにはモグラやトガリネズミ、テンレックなども同じ仲間で、主に昆虫や軟体動物などの無脊椎動物を食べています。一方、見た目が似ているヤマアラシはヤマアラシ亜目(テンジクネズミ亜目)に属する動物で、モルモットやチンチラの仲間です。
ハリネズミ亜科に属するハリネズミはシベリアを除くユーラシア大陸とアフリカ大陸のほぼ全域に分布し、耕作地や森林など生息環境は多岐に渡り広い分布域を持っています。また、ハリネズミの種類によって冬眠する種やしない種などのいくつかの違いがあります。
一般的に目にするハリネズミは大きくヨーロッパやアジアに分布し冬眠するハリネズミ属(Erinaceus)に属する種(マンシュウハリネズミ E. amurensisやナミハリネズミ E. europaeusなど)と愛玩動物として最も一般的なヨツユビハリネズミ(Atelerix albiventris)が属するアフリカハリネズミ属(Atelerix)があります。
最近、静岡県や神奈川県で帰化が問題となり、特定外来生物に指定されたのは冬眠でき日本の冬を越すことができるハリネズミ属に属する種で、ヨツユビハリネズミは現在指定されていません。
ヨツユビハリネズミの名前の由来はハリネズミの中で唯一後肢の指が4本しかないのでこの名前で呼ばれています。
また、ヨツユビハリネズミはアフリカハリネズミ、ピグミーヘッジホッグなどとも呼ばれることがあり、様々な毛色のハリネズミが売られています。
ハリネズミの特徴はなんと言っても全身を針がおおっていることです。この針は体全体にあるのではなく背中だけにあり、お腹は少しかための毛がまばらに生えています。
ハリネズミは犬や猫、フェレットなどのより一般的な動物に比べると代謝率が低いという特徴があります。
また、ハリネズミは基本的に単独生活を行なう夜行性の動物で一晩に餌を探すために数km移動するなど広い行動範囲を持つ活動的な動物です。
しかし飼育下ではこのような環境を準備することは困難であり多くのハリネズミが肥満しています。
ハリネズミの食事
野生のハリネズミの多くがほぼ完全な動物食(昆虫や軟体動物など)であるとする報告がある一方、動物園や一般家庭で飼育されているヨツユビハリネズミの多くは動物性の食事以外に野菜や果物などを与えており、多くのハリネズミが植物性の食事も食べています。
また、最近ではハリネズミ専用フードが市販されています。しかし、ハリネズミの動物種としての正確な栄養要求量はいまだ明確にされていません。
このため、すべての種や個体にこれだけ与えておけば問題ないという食事内容は今後も検討が必要であるというのが獣医師の間で一般的な考え方です。
それでは、ハリネズミには何を食事として与えればいいのでしょうか?
野生での食べ物
論文など正式なものとして野生下の食性が報告されているハリネズミの多くはナミハリネズミに関するものであり、ヨツユビハリネズミに関する報告はあまり多くありません。
それらの報告を確認すると、野生下のハリネズミは、地面や土中で採食できる小型の様々な生き物を捕食していると考えられています。具体的には甲虫類、イモムシ、ミミズ、ハサミムシ、ナメクジ、軟体動物、ハエ、ウジ、ムカデ、シラミ、ハチ、クモ、バッタ、コオロギなどの昆虫類やトカゲ、ヘビ、カエルなどの爬虫類、両生類さらに小型のげっ歯類や鳥の卵や雛鳥も捕食しているようです。また、その他、植物の葉や、種子、苔、樹皮、根、果実も食べることも確認されています。
飼育下での食べ物
飼育下での食事としては、入手できるようであればハリネズミ専用フードを、入手できない場合には肥満猫用のキャットフードを主体とし、その他、肉類、ゆで卵、チーズなどの動物性食と果物や野菜など植物性食を与えます。また、おやつ程度に餌用の昆虫類を状態に応じて与えるのが良いのではないかと考えています。
しかし、一番大きな問題はキャットフードやドッグフードなどよりもハリネズミ専用フードは嗜好性が悪く食べてくれないハリネズミが多いことです。
フェレットフードをハリネズミに与えている飼い主様も多いと思われますが、ハリネズミには脂肪分が多すぎるために避けるべきであると報告している専門家もいます。このため肥満傾向にあるハリネズミにはより脂肪分の少ない犬猫用のフードを選んだ方がよいと思われます。
エサの与え方
ハリネズミは夜行性の動物です。また、食事の中には水分を含んだ腐敗しやすいものが含まれることがあります。このため、食事が腐るのを防止し、食事を探すために動き回ることで運動をさせることなどを考えると食事を与える最適な時間は夜間ハリネズミが起き出して食事を探すようになってから1~2時間してから与えるのがよいと考えています。
与える食事の量は太りすぎないよう、ケージの大きさや個々の運動量に応じて与えることが基本ですが、飼育下のハリネズミの多くは肥満傾向にあるため、定期的に体重を測定しながら食事の内容や与える量、運動量の調整をしていくことが理想的です。
フードはドライフードをそのまま与えるか、ふやかして柔らかくして与える方法があり、それぞれ一長一短があります。ドライフードを与えることは歯を清潔に保ち歯石を予防するのに有効です。しかし、ドライフードやナッツ類や種子類、ニンジンなど大きく硬いフードは顎に負担をかけたり、歯と歯の間に挟まってしまい問題を起こすこともあります。このため、ドライフードを与えるときはよく観察し食べにくいようであれば砕いて与えるかふやかしてから与える方がよいと思われます。フードをふやかして与える場合には歯石や歯周病の原因になることもありますが、ドライフードを食べてくれない子に対しては、野菜ジュースや動物用ミルクなどでふやかして与えることもできます。
ハリネズミに与える餌用の虫は最近では様々な種類がペットショップ、特に爬虫類専門店で購入できるようになってきました。ミールワームやコオロギなどは缶詰にされたものもまで市販されています。これらの餌用虫を与える際に最も注意しなければいけないことは購入後、ハリネズミに与える前に餌用虫に十分な食餌を与えることです。市販されている虫の多くは、そのままでは栄養状態が悪くCaとPの比が逆転していることも多いため、餌用昆虫にドッグフード、キャットフードやコオロギ用のフード、カルシウム剤を振りかけた野菜くずなどを与えることで適切な栄養状態に戻したあとハリネズミに与えるようにします。また、これらの幼虫類は脂肪分やカロリーが高いことも報告されているため与えすぎには注意が必要です。
水の与え方
水は新鮮なものを用意し常に飲めるようにしておきます。ほとんどのハリネズミは給水ボトルから飲むことを覚えますが、実際に給水ボトルから飲めているかどうかを確認することが大切です。