ウサギの子宮疾患

ウサギの寿命は以前は6-7歳くらいと言われていました。しかし、最近では10歳以上生きるウサギも増えてきており、高齢のウサギは雄か避妊された雌がほとんどです。
この原因として、4-5歳以上の雌ウサギでは子宮に問題が出る確率が非常に高くなっているためと考えられています。
ウサギの子宮では子宮腺癌、子宮内膜炎、子宮水腫、子宮筋腫、子宮蓄膿症など様々な疾患がみられ、それぞれ予後が異なります。

症状

写真1

写真1 お腹に水が溜まり
腹部が張っているのがわかります。

最も多い症状は血尿です。
血尿は尿全体が赤くなったり、尿の中に血の塊がみられたり、鮮血が陰部から出てきたりと程度や状態は様々です。また、持続的に血尿がみられることはまれで、時々血尿になったり、普通の尿になったりを繰り返すことが一般的です。

ただ、ウサギの尿は正常でも黄色や白色、赤色、褐色など様々で尿が濁っていることもあります。このため、見た目だけでは本当に血尿かどうかを判断することが難しく、疑わしい場合には一度動物病院などで尿検査を行うか、尿検査紙を購入し血液反応の有無を確認することが必要です。
子宮の病気ではこれまで軽度の出血しかみられなかった場合でも突然、多量の出血がみられることもあるため、必ず毎日尿の状態を観察して異常があればすぐに動物病院を受診してください。

子宮に水がたまる子宮水腫や膿がたまる子宮蓄膿症の場合には血尿がみられず、お腹が脹ってくる(写真1)などの症状がみられることもあります。

子宮疾患の初期には食欲や元気に異常がみられないことも多いのですが、疾患が進行すると肺への転移や貧血、敗血症、横隔膜の圧迫などにより食欲不振や呼吸困難がみられることもあります。

治療

抗生剤や止血剤などで症状の改善がみられることもありますが、内科療法でウサギの子宮疾患を完治させることは困難なため、出血の有無をよく観察していくことが大切です。
犬や猫では、血尿の一番多い原因として膀胱炎が挙げられ、雌ウサギの血尿も抗生剤や止血剤の投与で一時的に症状が改善することがあります。
しかし、これは一時的なものに過ぎず子宮疾患に対する治療効果はほとんどありません。
血尿を繰り返す避妊していない雌ウサギでは必ず子宮に問題がないことを動物病院で確認してください。

疾患の進行や症状、ウサギの年齢などに応じて治療方針を決定します。
子宮疾患に対する有効な治療方法は、問題のある子宮と同時に卵巣も摘出する卵巣子宮全摘出術を行うことです。しかし、子宮の悪性腫瘍の場合には診断時にすでに肺などへ転移していることもあり外科的な治療が行えないこともあります。この場合には、食欲の維持や呼吸状態の維持、鎮痛や飼育環境改善などできるだけウサギに負担がかからないように獣医師とよく相談して治療方針を決めることが大切です。

予防

子宮疾患は3-4歳以上の避妊していない雌ウサギがかかりやすいことが確認されています。一番の予防方法は、病気になる前に避妊をすることです。
避妊する時期は、ウサギが年齢とともに子宮の周囲にたくさんの脂肪を蓄える傾向があることや年齢とともに他の病気にかかる確率も高くなることを考えると性成熟後の6ヵ月齢から1歳齢くらいがよいと考えています。
また、ウサギが肥満している場合には麻酔や手術のリスクが高くなるため、予防的な避妊は獣医師の指導の下、適正な体重に落としてから行った方が良い場合もあります。

避妊していない雌ウサギの場合は、血尿がないかどうか、腹部や乳腺が張ってきていないかどうか(子宮疾患が原因で乳腺に異常が出ることもあります)などを定期的に自宅で確認するか動物病院で定期健診を受けることをお勧めします。