ウサギの消化管うっ滞(毛球症)
消化器の特徴
草食動物であるウサギは常に食べ続け、消化管も休むことなく働き続けています。
ウサギの消化管は犬や猫とは大きく異なり、低栄養で高線維の牧草などを消化し効率よく利用するために様々な特徴を持っています。このため、犬や猫に比べるとウサギの消化器疾患は非常に多く、病態も異なり早期に治療をしないと重篤な状態になってしまうこともあります。
消化管うっ滞(毛球症)
消化器疾患の中で最も多いのが、消化管のうっ滞(消化管の運動が止まってしまうこと)です。消化管のうっ滞は、消化管の運動が低下したり、停止したりすることで食欲の低下や糞の小型化、排便量の減少などがみられます。症状が進むと元気がなくなったり、腹部が脹ってきたりすることもあります。
以前は、グルーミングなどで飲み込んだ毛が毛球状にかたまり消化管うっ滞を起こすと考えられてきました。しかし、現在では毛球症という診断名は見直されています。
原因は胃内に毛球があることではなく(正常でも胃内にある程度の毛は混じっていますが)、何らかの原因で胃の運動が低下することにより消化管のうっ滞が起こり、その結果、胃内に毛球が形成されると考えられています。
消化管のうっ滞は消化管の問題だけではなく、痛みやストレス、歯科疾患、泌尿器疾患など様々な要因による食欲低下や、不適切な食餌管理などが原因で起こります。
またウサギでもまれに異物を飲み込んで消化管を傷つけてしまい、消化管の運動を妨げる原因となることもあります。
さらに、ウサギの消化管内ではたくさんの細菌が発酵を行って栄養分の豊富な盲腸便を作り出しています。しかし、消化管の正常な運動ができなくなると腸内の細菌のバランスが崩れ、消化管内に異常な量のガスが溜まる鼓腸症と呼ばれる状態にまで悪化することもあります。
症状
食欲低下や食べ物の好みの変化、便の小型化、排便量の減少、毛でつながった便がみられるなど食欲や排便に関係する異常がみられることがほとんどです。また、他の疾患が原因で食欲が低下している場合にも、二次的に消化器に異常がみられることが多いのもウサギの特徴です。
この場合には元気がない、じっとして動かないなどの症状がみられることもあります。
さらに、消化管内にガスが貯留した場合には、じっとうずくまったまま動かなくなったり、時折りおなかを伸ばしたりしてなんとなく身の置き所が悪いような症状や、痛みのため歯軋りがみられることもあります。
また、異物や毛球が胃の出口や腸内で完全に詰まったり、消化管内の異物が消化管を傷つけてしまった場合には急激にお腹が張ってきてショック状態に陥るなど急変することもあります。
治療
治療は消化管の機能を正常に回復させることを目的に行ないますが、同時にもともとの原因を確認して治療することが非常に大切です。
食欲不振や便の小型化、排便量の減少などがみられる場合には、動物病院を受診して原因を確認し、原因に対する治療を行なってください。
食欲不振の原因にかかわらず、食欲が落ちているウサギには強制給餌が有効な治療となる場合が多いです。強制給餌は、動物病院で販売している専用の処方食か、市販のペレットをふやかしてお粥状にしたものを注射器などで与えます。
投薬や強制給餌時にどうしても口の周りが汚れてしまいますが、毎回濡らしたタオルやティッシュなどできれいにふき取ってあげることが皮膚炎の予防には大切です。また、元気がある場合には適度な運動やおなかを軽くマッサージしてあげることも胃腸の動きを回復するのには有効です。
糞の状態や数、大きさを確認することも大切です。
ウサギは必要な量を食べていれば通常、コロコロとした大きな糞を毎日たくさん排泄します。食べているようにみえても糞が小さくなったり、数が減ってくるようであれば一度動物病院に相談した方がよいこともあります。
また、強制給餌の量が適切かどうかや消化器疾患の回復の程度も糞の量や状態を確認することで判断できます。
最後に、ウサギはストレスに非常に弱い動物で、強いストレスにより食欲がなくなったり、下痢をしてしまうことがあります。このため治療中はできる限りストレスを軽減することも大切です。