ウサギの寄生虫疾患

消化管内寄生虫

ウサギの消化管内寄生虫はいくつかの種類が報告されています。
その中で、愛玩のウサギにみられることの多いものはコクシジウムと蟯虫と呼ばれる寄生虫です。
コクシジウムは目で見ることはできないため、便を顕微鏡で検査して寄生虫を確認します。感染すると子ウサギでは軟便や下痢などの症状がみられることが一般的です。
一方、蟯虫はしばしば数mm程度の白い小さな虫が糞に付着しているのが肉眼で確認されますが、消化管内に寄生していても明らかな症状がみられないことも多いです。

治療

消化管内の寄生虫は糞便検査などで診断し、駆虫薬を投与することで治療します。
また下痢の場合、特に子ウサギの下痢は注意が必要で長引くと命に関わることもあるため、すぐに動物病院を受診してください。

麦類やビスケットなどを与えることで下痢や軟便がひどくなることもあるため、糞に異常がみられる場合は与えるのをやめて牧草を主体とした食事に変更してください。

また、寄生虫や感染性の疾患、糞便による皮膚炎を予防するためには常に清潔な環境を維持することが大切です。軟便や下痢の場合には糞による陰部の汚れが非常にひどく放っておくとひどい皮膚炎の原因になってしまいます。
陰部の汚れはできる限りきれいにふき取るようにし、ひどい場合には毛を剃ったり、局所的にシャンプーをしなければならないこともありますので動物病院に相談してください。

外部寄生虫

ウサギの皮膚疾患は多く、湿性皮膚炎やトレポネーマ症などの細菌性皮膚疾患、足底皮膚炎、皮膚糸状菌症(カビ)など様々な疾患がみられますが、そのうち1~2割が寄生虫疾患といわれています。

■ツメダニ症

ツメダニ症はよくみられ、皮膚寄生虫疾患の約8割を占めます。ツメダニ症はウサギツメダニ(Cheyletiella parasitivorax)の寄生により起こります。

顕微鏡で見たツメダニ

顕微鏡で見たツメダニ

ツメダニ症の皮膚のフケ

ツメダニ症の皮膚のフケ

このダニが感染すると、後頭部から頚背部や臀部(おしりから腰のあたり)にかけて大きな落屑(フケ)や脱毛が認められます。多くの場合、掻痒感があり後肢で引っ掻いてしまうため痂皮(かさぶた)ができていることもあります。しかし、掻痒感が全くないこともあるので、皮膚の落屑や痂皮に気が付かないこともあります。
検査は、セロハンテープで落屑を採取し、顕微鏡でダニやダニの卵を検出します。治療は、イベルメクチンというお薬を経口もしくは皮下に3~4回投与します。また、当院ではセラメクチンという背中に滴下するタイプのお薬を投与したりします。

■ズツキダニ

ズツキダニ(Listrophorus gibbus)は時折みられますが、ツメダニと同時に寄生していることもあります。ズツキダニはツメダニに比べて掻痒感を伴わず、症状がわかりにくいのが特徴です。検査や治療は、ツメダニ症と同様に行います。

■ヒゼンダニ(疥癬)

ウサギで疥癬がみられることはまれであり、眼瞼縁、鼻、口唇、前肢(爪)などに寄生し、角質の堆積がみられます。疥癬は激しい痒みを引き起こすため、ひっかき傷による二次的な創傷を伴うこともあります。

疥癬症のウサギの耳(表)

疥癬症のウサギの耳(表)

疥癬症のウサギの耳(裏)

疥癬症のウサギの耳(裏)

疥癬症のウサギの前肢

疥癬症のウサギの前肢

■ノミ症

ノミ症

ウサギの皮膚に見られたノミの糞

家庭内のみで飼育している場合、感染することは非常にまれですが、ウサギに寄生するノミはイヌノミやネコノミが多く、犬や猫が同居しているご家庭では注意が必要です。

■ハエ蛆症

ハエ蛆症

ウサギの皮膚のハエ蛆

海外で報告されているような屋外飼育のウサギに発生する皮膚ハエ蛆症とは異なり、国内の場合、肥満や脊椎疾患などにより盲腸糞や尿が鼠径部や肛門部に付着したまま不衛生になりやすく、それに加えて環境の衛生管理の悪さが発生原因となります。